necco訪問記

(他ブログより移行)


東京・西早稲田発達障害者のための交流スペースがあるという話を聞いた。neccoというらしい。早速グーグルで調べてみたところ、そこは「オルタナティブ・スペース」であり、また発達障害者による発達障害者のための作業所であるという。午前中は喫茶店で、午後は発達障害者の居場所で、夕方からはイベントをやるなどと書かれている。なかなか興味をそそられるものであった。

僕自身には発達障害の診断がないのだけれど、この交流スペースは趣旨に賛同するのであれば参加資格は不問であるという。それがまた気に入った。僕はこれまで当時者団体に参加したことはない。当事者団体に参加するのには診断が必要だと思い込んでいたからである。僕は診断が不問であると明言している当事者団体を知らない。しかし、ここの説明を読むかぎり、仮に当事者でなかったとしても、喫茶店の客のような立場で参加して良いと読めるのである。

(5月)7日の昼ごろ、僕は新宿で所用をすませたあと副都心線に乗ってこの交流スペースに向かった。西早稲田の駅を降りて数分のところに餃子屋があり、その建物の階段を上がっていくと「necco」という貼り紙がしてある部屋があった。パソコンから打ち出されたと思われるモノクロの貼り紙は、看板と言うには粗末なものである。しかしそのデザインはなかなかオシャレである。

ドアを開けると、中年の男性がひとりで座っていた。男性は突然の来客に少し驚いた様にも見えた。僕は「はじめまして」と挨拶をしたのち、ツイッターでここを知り、初めて訪問したと説明した。すると中年の男性はお茶を煎れながら「あなたは当事者ですか?」と尋ねてきた。僕は、勧めらられた茶を飲みながら、診断はないが当事者だと思っていますと答えた。仕事で差支えが出ているわけではないが、部屋が片付かないというような話をした。

中年の男性は自分が描いた絵の展示会をしていると言って壁に貼ってある絵を見せたのち、3階にある事務所を案内してくれた。そしてそこに置いてあった『トビオはADHD』という漫画を指差し、自分はこの著者であると言った。そこで初めて僕は目の前にいる中年男性が大橋ケン氏であることを知ったのである。大橋氏はneccoが正式な作業所になるための手続きやNPOの法人格を取るための手続をしていることを説明してくれた。僕は茶をすすりながらその話を聞いた。

午後2時半からイベントがあるから時間をあけてまたくるといい、僕は一旦退出。高田馬場周辺を散歩したのち、再びneccoに行く。すると何人かのひとがイベントを待って座っていた。イベントが始まるまで特に話すこともなく座っていたが、僕の目にとまったのは、さきほど大橋氏と茶を飲んだときのお茶碗が出っ放しになっていたことである。僕も大橋氏も茶碗を片付け忘れていたのである。これぞADHDである。まさにADHDである。

そのあとイベントが始まり、アメリカから帰国したというアスペルガー症候群の方の話を聞いた。あまり長時間は耐えられないと思ったが、本論は20分くらいで終わり、そのあと質問や雑談になった。それはそれで楽しいものであった。いや、テーマが発達障害であるというだけで、進行そのものは普通だった。

とりあえず、僕はイベントよりも片付け忘れた茶碗にこそ心のふるさとを感じたのである。いや、嫌味じゃなくてマジで。