夢と精神病

僕たちが普段みる夢のなかにこそ、精神病への理解を深めるてがかりがあるように思う。


僕は「眠らないこと」が精神に与える影響が大きいようだ。ほんのわずかな期間睡眠が乱れるだけで精神病のような症状を見せる。だが僕は多少なりとも精神病についての知識があるので、本格的な精神病に至る前に休養をとるようにしている。


そんな僕が最近感じているのは、僕たちが見る夢は精神病的であるということだ。そして不眠はその「夢と現実の境界」を破壊し、精神病を引き起こしているのではないかということだ。


まず第一に、夢のなかで僕たちは現実ではない状況を受け入れている。


先日、僕は亡くなった祖父の夢を見た。今では取り壊されてしまった祖父の家のなかに僕はいて、ふらふらとした足取りで部屋に入ってくる祖父を見たり、あるいは別室にあるドクロがあるのを発見したりする。


僕はその夢を見ているとき、祖父が現実には死んでしまっていることを微塵も思い出さなかった。よぼよぼした足取りを見て「もういつ死んでもおかしくない年齢だから……」と思ったくらいだ。


考えれば考えるほどにそのときに脳で何が起こっているかは気になることだ。もしも起きているときに、死んだ祖父のことを生きていると言ったらば、僕は間違いなく何らかの精神疾患、あるいは認知症を疑われるだろう。


第二に、夢のなかで会話する他者は、ほかならぬ僕自身の脳が生み出した存在でしかないにも関わらず、他者として振舞う。


夢のなかに現れる他者は、自分の思い通りに動くだろうか。そんな楽しい夢が見れるなら見てみたいものだ。夢のなかに現れる他者は、僕を不愉快にさせたり、悲しい思いをさせる言動をとることがままある。


これも考えてみれば不思議なことだ。僕たちの脳の中、しかし意識の外側のどこかに、僕たちに話しかけてきたりする人格を持った存在がいるのである。


最後に、夢を見るとき、脳はその機能を落としている。


何を当たり前のことを、というかも知れない。しかし夢を見ているとき(レム睡眠)についてwikipediaには「外見的には寝ているのに、脳は覚醒状態にある」と書かれている。脳波の振幅は覚醒状態とほとんど同じだというのだ。


だが僕は起きて目を瞑っている状態とレム睡眠の状態を同じだと感じたことはないし、おそらくほとんどのひとはそうだろう。じゃあレム睡眠と覚醒時は何がどう違うのか。脳波が「ほとんど」同じであるにも関わらず、これほどの違いがある。


僕は専門家ではないから詳しいことは分からない。素人である僕が指摘できるのは、睡眠時に起こっていることは、起床時であれば精神疾患扱いされるような現象ではないか、ということだ。


以上、夢に精神病を理解の手がかりがあるのではないか、ということについて考えてみた。夢で起こることを深く考えていくと、精神病というものが私たちからそれほど遠い存在ではないように思えてくる。


世間に精神疾患に対する理解が広がることを願い、筆をおくことにする。