エジプト気球事故 生死を分けたイギリス人の判断

生死を分けたのは「炎」に対する意識を持っていたことではないのか。エジプトの気球炎上事故では、乗客20人のうち19人が死亡した。奇跡的に助かった英国人の乗客は、火だるまになった操縦士とともに、地上3〜5メートルの地点で飛び降りたという。その後気球が100メートルまで上昇した段階で飛び降りた乗客は助かることがなかったという。


第一に抑えておきたいのは、咄嗟の判断をするにも日ごろからさまざまなことを考えていなければならないということだ。人間が認知、判断、行動をするのにはどうしてもある程度の時間がかかる。


この事故のなかで、どの段階で生命の危険を感じ、体を動かせたかということを考えると「操縦士が炎にくるまれたとき」であると思う。気球の操作がおかしいというようなことは、素人の観光客に分かるものではない。


「この英国人は『野生の勘』で逃げたのだろう」という意見は曖昧すぎると思う。いったい「野生の勘」ってなんだ。エジプトに観光に出かけて景色を楽しむための気球に乗った英国人が野生児だとでも言いたいのだろうか。


第二に、炎を見たときに反射的に体を動かし危険を回避する能力は、比較的どこででも役に立つ能力だと思う。


炎を見たときに固まらずに声を出す、体を動かすというようなことは日本でも火災の際の重要なことと認識されているはずだ。消防署の講習などで、炎を見たら周囲に危険を知らせるために大声で「火事だ」と叫ぶ、というような指導を受けたひとは少なからずいると思う。そしてこれは決して「野生の勘」などではない。日ごろの意識次第で咄嗟のときに固まらずに体が動かせるようになるというたぐいのものである。


以上、炎に対する意識がエジプト気球事故の生死を分けたのではないかということについて考えました。


最後に、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。